<オプラ>
手術前、自宅に戻ってからも
自分が誰なのか分からなかったのですか。
「私」はジルという名前で、科学者で、
ここは自分の家で、これは私の家具で...など
そういう感覚は戻らず
エゴは消え去ったままだったのですね。
<ジル>
ええ、そうです。
「私」という感覚はずいぶん長い間
戻ってきませんでした。
手術前の2週間半
そして手術後の2週間半も
完全な静けさの中にいたのです。
自分が誰なのか、
どんな職業なのか、
何をしなければならないのか、
そんな脳のおしゃべりが全くない。
実にすばらしいものでしたよ。
ゆったりとして 平安で 完全で 壮大で...
自分の身体も 周りの景色も すべてが
うっとりするほど鮮やかにイキイキとしている。
そして身体はうまく動かないにしても
生きているという驚異...
とてつもない幸福感に包まれて
満面の笑みでソファに座っていました。
平安とは思考が消え去った状態です。
そしてそれは
私たちが選択できることなんですよ。
<オプラ>
エックハルト・トールは
精神的な傷のことを「ペインボディ」と呼んでいますが
あなたはペインボディを失ったのですよね。
<ジル>
そういうことです。
実は左脳の機能が回復してから数年後に
ペインボディが戻ってこようとしたのですが
私は拒否しました。
ペインボディが引き起こす身体の感覚が
好きではないからです。
不快な感情というのは
まさに身体的な痛みとして感じるのですよ。
<オプラ>
脳卒中から回復してから
ペインボディという重荷を背負うか背負わないか
選択するようになったのですね。
古いお荷物だけではなく
新たなお荷物もつくらないようにする。
どのようにして
そんな選択ができると分かったのですか?
<ジル>
不快な感情によって生じる身体感覚が好きではないので
そういう回路を選ばないようにしたのです。
すべては神経回路なんですよ。
たとえば悲しいことを考えたら
のどが締め付けられるように感じたり
身体的に不快な感覚が起こるでしょう。
そういう感覚が好きじゃないので
そのような回路が働かないようにすることを
ただ選んでいるだけです。
いいですか
脳というのは単に
細胞のかたまりなんですよ。
脳細胞を小さな子供たちだと思ってください。
いろんなグループがいろんなゲームをしていますが
一緒に遊びたいようなゲームをしている子供たちもいれば
参加したくない種類のゲームをしている子供たちもいます。
参加したくないゲームにはNOと言えばいいだけです。
誰でもできることなんですよ。
☆
<オプラ>
じゃあ、あなたはもう決して
古いお荷物を背負うことはないのですか。
白紙の状態なんですね。
<ジル>
そう。白紙なんです。
でも
何の概念も記憶もないということではないんですよ。
今では新しい左脳が機能しているのですから。
左脳は物事を判断をしますが
生きていくためには必要なことです。
☆
<オプラ>
脳卒中を起こすことなく
あなたのように生きるにはどうすればいいのでしょうか。
<ジル>
エックハルト・トールのメッセージと同じです。
思考に気を付けることです。
思考はあなたではありません。
あなたの思考は
ピーナッツほど小さな細胞の集まりが創り出しています。
多くの人々は
そんなちっぽけなピーナッツに
人生を支配させているのですよ。
この世界で安全に生きるために
小さな細胞の集まりが「物語」を語るように設計されている。
それだけのことなんです。
そのことに気付いてください。
☆
<オプラ>
「自分」という感覚が何もない
解脱の境地を
今でも感じることはできるのですか?
<ジル>
もちろん、いつもです。
☆
<オプラ>
エックハルト・トールは
「いま」だけが重要なのだと言っていましたが
あなたの体験も
「いま」以外のときが無くなる
という状態だったのですね。
<ジル>
そのとおりです。
おもしろいことに
私の「いま」の体験は次のような感じでした。
たとえば
今こうしてあなたとの会話を体験していますが
私があなたに背中を向けたとたん
あなたはもう存在しないのです!!
記憶の中を通り過ぎるもしれませんが
実際のあなたは消え去ります。
この瞬間と次の瞬間とをつなぎあわせて
知覚に連続性をもたせて物語を創るのは
左脳の働きなので
その機能を失うと
一瞬前の過去さえ存在しないのですよ。
☆
<オプラ>
瞑想はしていますか?
<ジル>
いいえ。必要ありません。
思考というものは単に
脳の小さな細胞のおしゃべりだと分かっていて
そんなおしゃべりを聞くかわりに
いまの瞬間に耳を傾けていれば
そこに平安はあるのですから。
☆
’私という個人的な感覚、 自我(エゴ)’
あなたは それが自分だと感じているかもしれませんが
違うんですよ。
それはあなたではなく
左脳の細胞の集まりです。
そんなピーナッツほど小さな細胞の集まりを
取り除いてしまえば
もうエゴはいないんですよ。
そして エゴがいなくなっても
あなたは存在するのです。
☆
<オプラ>
そのピーナッツみたいな脳細胞は
記憶や思考を作っているんですか。
何のためにあるんですか?
<ジル>
物語を語る部分というのは
脳にとって
とても大切な機能なのです。
世界からあれこれと情報を拾い集めて
可能性を探ります。
その機能のおかげで私たちは
未来や現在を自由に行き来して
この世界で創造的に生きることができるのです。
でも同時にその機能が
厄介な感情の原因にもなるわけですね。
<オプラ>
その細胞を
手術で取り除いたらどうなりますか?
<ジル>
言語機能を失うでしょう。
困りますよね。
言葉は必要でしょう。
物語を創り上げること、つまりエゴは
私たちが言語機能を持つことの代償なのです。
☆
思考はあなたではありません。
それは脳を調べても絶対的な真実なんですよ。
私たちの多くは
左脳の細胞の集まりを「自分」と決めつけていますが
それは
子供の頃そのようにしか教わらなかったから。
それだけのことなのですよ。
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